第十四章 署名
一
一九四七年の春、連邦評議会で日本案が否決された。
台湾の暫定行政延長を求める動議だった。日本が提出し、インドネシア・ベトナム・朝鮮が反対票を投じた。台湾代表の席は空いていた。行政的議題——単純多数決。日本が連邦の多数決に負けた初めての瞬間だった。
議事録には記載されないことがあった。投票の前に、台湾行政委員会から派遣された陳情員が傍聴席にいた。陳情員の手には、台湾語と日本語で書かれた請願書があった。発言は認められなかった。陳情員は席に座ったまま、投票が終わるのを見ていた。投票の対象は彼の島の帰属だった。彼の名前は議事録になかった。
朴は評議会の席に座っていた。投票結果が読み上げられたとき、朴の手は机の上にあった。動かなかった。
陳情員は傍聴席を立った。傍聴券が椅子の上に残っていた。朴はそれを拾い、上着のポケットに入れた。
野坂が隣で何かを言った。朴には聞こえなかった。
二
署名式は翌月に予定されていた。連邦憲法の最終稿が各構成国に配布される。署名式で全構成国の代表が署名し、連邦が法的に成立する。
朴が設計した連邦だった。評議会の議決ルール。構成国の地位。拒否権の範囲。ACAの清算構造。すべてが朴の頭から出て、紙の上に移されたものだった。
署名式の朝、朴の机に連邦憲法の最終稿が届いた。
事務局が届けたのは夜明け前だった。朴はまだ机に向かっていた。封筒を開け、表紙を見た。
署名欄があった。
一つの欄に、名前が印字されていた。
木村鉄雄。
事務局が朴の公式名を使ったのだった。三十年間使った偽名が、革命国家の公文書に正式に刻まれようとしていた。
朴の手が止まった。
朝鮮人の朴永哲が設計した連邦を、日本人の木村鉄雄が署名する。これは理屈の問題ではなかった。合理化できなかった。手が動かなかっただけだった。
朴はペンを取った。署名欄の上に持っていった。ペン先が紙の二ミリ上で止まった。
前日の評議会が浮かんだ。台湾の陳情員が傍聴席に座っていた。発言を求め、遮られ、投票が行われ、彼の名前は議事録になかった。あのとき朴は何もしなかった。七年前の人民評議会で、朴が朝鮮語で呼びかけたとき、「木村さん、次の議題を」と日本語で塗りつぶされたことを、朴は覚えていた。あのときも、朴は次の議題に進んだ。
ペンを机に置いた。
隣の部屋で、通訳が椅子に座って待っていた。朝鮮語版の翻訳がまだ届いていないと言われ、待たされていた。朴はそれを知っていた。翻訳が後回しにされていることを、朴は知っていた。朴がそうしたからだった。
帆布の小袋が引き出しの中にあった。朴は開けなかった。匂いがないことを知っていた。
灯りの油が減った。窓の外で、夜が白み始めていた。署名欄の「木村鉄雄」の四文字は、朝の光の中でも変わらなかった。
手は動かなかった。
二・五 夜明け前の一時間
朴はペンを机に置いた。
置き方に特別な意図はなかった。ただ手が開いた。ペンが転がり、署名欄の四文字の隣で止まった。「木村鉄雄」の隣に、万年筆の軸が横たわった。
隣の部屋で、通訳が動く気配がした。椅子が床を擦る音。咳払い。それから静かになった。
朴は机の引き出しを開けた。帆布の小袋が手前にあった。取り出さなかった。ただ見ていた。
小袋の布は、二十年前より色が褪せていた。口の紐が、長年の結び解きで毛羽立っていた。中に紙片がある。金廷民の文字で書かれた符丁の列。もう何の意味もない名前たち。しかし朴はそれを捨てなかった。捨てる理由が見つからなかった。
朴は引き出しを閉めなかった。帆布の小袋を見ていた。
帆布の小袋の隣に、一枚の紙片があった。あの陳情員の傍聴券だった。
机の表面の木目。手の平の温度。あのとき動かなかった手の、重さ。朴が設計した連邦は、日本語を媒介として動いていた。朝鮮語版も、台湾語版も、まだ届いていなかった。
あのときも、手は動いた。ペンを取り、次の草稿に印を入れた。会議は続いた。
今は手が動かなかった。
引き出しの中の帆布の小袋は、朴を見ていなかった。物には視線がない。しかし朴は小袋の方向を見ていた。布の褪せた色を見ていた。三十年前、金廷民がウラジオストクの食堂でスープの匙を置いて取り出した小袋だった。金廷民の手の甲に青い血管が浮いていた。
金廷民が何を信じていたのか、朴には今もわからなかった。日本の運動と朝鮮の運動は別物ではない、と言った。朴はその言葉の傍に立った。立ったまま、日本語を第一の言語にし、木村鉄雄という名前を三十年生きた。
その名前が今、署名欄に印字されている。
朴は引き出しを閉めた。帆布の小袋は引き出しの中に残った。
窓の外で、空が白み始めていた。
夜明け前の一時間だった。最も暗い時刻でも、最も明るい時刻でもなかった。何かが変わる前の、静止した時間だった。
灯りの油が減った。炎が小さくなった。朴は立ち上がり、油壺の傾きを直した。炎が戻った。
署名欄の上に戻った。「木村鉄雄」の四文字はそのままだった。
ペンを取ろうとして、手が止まった。手首から先が、動かなかった。動かそうとした。動かなかった。
隣の部屋で、通訳が再び動く音がした。立ち上がる音、ドアに近づく気配、それから止まった。まだ指示がないことを知って、引き返したのだろう。
朴は机の前に座ったまま、手を見ていた。手の甲。指の関節。三十年、炭鉱で、港で、会議室で、使ってきた手だった。木村鉄雄の手だった。朴永哲の手だった。
手は動かなかった。
三
朴は署名を拒否した。
正確に言えば、署名式に出席しなかった。朴は朝、机の上の憲法最終稿を畳み、封筒に戻し、引き出しに入れた。そして荷物をまとめた。
帆布の小袋を引き出しから出した。三十年間持ち歩いた小袋だった。紙片はまだ入っていた。匂いはなかった。重さだけがあった。
朴は大阪を発ち、朝鮮に向かった。
三・五 平壌、翌朝
チェ・ミョンスクが学校に着いたとき、廊下はまだ暗かった。
用務員の崔さんが石炭ストーブの火を入れている途中だった。「先生、今日は早い」と崔さんが言った。チェは「採点が残っていて」と答えた。それだけだった。
職員室の机の上に、ヒョンジュンのノートが重なっていた。昨日預かったまま、赤ペンを入れていなかった。チェはコートを脱がずに椅子に座り、表紙を開いた。
ヒョンジュンの字は、最近少し変わっていた。以前は打つように書いていたのが、今は引くように書く。筆圧が落ちたのではなく、字の作り方が変わった。何があったのかチェは知らない。知らないまま、ノートにペンを走らせた。
「『나는』——『私は』。助詞の位置は正しい」
「『갔다』——語幹に過去形語尾。形は合っている。でも、もう一度音読して」
丸をつける。丸をつける。一か所だけ波線を引く。「発音で確認」と小さく書き添える。
ストーブがようやく温まり始めた頃、廊下で足音がした。同僚の李先生だった。新聞を脇に挟んでいた。「読んだ? 大阪のほう」と李先生が言った。
「何が」
「署名がなかったって。昨日。連邦の」
チェは赤ペンを止めた。一秒か二秒、止まった。それからまた動かした。「誰が」
「木村さんが出なかったって。朝鮮代表でしょう、あの人」
李先生は自分の席に座り、新聞を広げた。チェはヒョンジュンのノートに戻った。次のページ。また助詞。また丸。
署名式のことは、二か月前から聞いていた。連邦が法的に成立する日だと。自分の授業に何が変わるのか、チェにはまだわからなかった。カリキュラムの通達は来ていない。朝鮮語の時間数が変わるかどうかも、まだわからない。
ヒョンジュンのノートの最後のページに、鉛筆で小さく書かれた言葉があった。消しかけて、消しきれなかった跡だった。
「선생님은 알아요?」——先生は知っていますか?
何を、とは書いていなかった。
チェはそこに赤ペンを入れなかった。ただ読んで、次のページに進もうとして、次のページがないことに気づいた。ノートはそこで終わっていた。
職員室の窓の外で、生徒の声が聞こえ始めた。最初の一時間目まで、四十五分あった。
チェは立ち上がり、チョークを取りに黒板の前に行った。前の先生が使い切ったチョークが、受け皿に三本残っていた。短すぎて使えないものだった。チェはそれを屑入れに捨て、新しいチョークを一本取り出した。
黒板に書く内容は、もう決まっていた。
四
朝鮮に着いたとき、金日成は既に別の権力を固めていた。
朴が設計した連邦の中で、金日成は連邦の設計を必要としない権力を築いていた。朝鮮人民軍。議政院。独自の党組織。三つの柱が、朴の連邦とは別の建物を支えていた。
朴は金日成に会った。金日成は朴を迎え、席を勧め、茶を出した。礼儀正しかった。
金日成は言った。
「自決権の行使手続きが日本語で書かれている」
朴は何も答えなかった。
金日成の台詞は正確だった。連邦憲法は日本語で起草された。朝鮮語版はまだ届いていなかった。
朴はそれを知っていた。
五
鬼頭誠一郎は、旧特高の文書保管庫にいた。
一九四七年。革命政権は鬼頭に文書整理の仕事を与え続けていた。鬼頭は毎日、帝国が残した紙の山を分類し、目録を作り、棚に並べた。
朴が署名を拒否して朝鮮に発ったという報せは、鬼頭にも届いた。鬼頭は報告を聞き、方眼紙を取り出した。「木村鉄雄」の名前を見た。
十六年間追い続けた名前だった。追うのをやめた名前だった。追う必要がなくなった名前だった。
しかし名前はまだそこにあった。方眼紙の上に。連邦憲法の署名欄に。朴が拒否した紙の上に。
鬼頭は方眼紙を折り、胸ポケットに戻した。
文書保管庫の棚には、旧特高が作成した監視報告書が何千冊も並んでいた。帝国が朴を追い、朴が帝国を倒し、帝国の記録が革命国家の財産になった。鬼頭はその記録を整理する係だった。
紙は残る。人は去る。紙だけが残る。